自ら研究費を稼ぐ研究者像の確立~変わりつつある研究費の事情~

Sunburst Over River

 

最近起こっている、重大な変化

~自ら研究費を稼ぐ研究者像の確立~


ここ最近、研究者の研究費事情に、重大な変化が起こっています。国が研究費を十分に与えることができなくなっていることや、産学官連携などで研究の成果を社会に還元する関心が高まっていることが背景にあるのでしょう。さて、いったいどんな変化が起きているというのでしょうか。

 

ここ近年起きている大きな変化といえば、研究者たちが自分で研究費を稼ごうという動きが出てきているということです。われわれの意識だと、これまで研究者というのは「売れないけど必要な存在」と自他ともに認識し、守られる存在としてありましたが、それがいつのまにか「売れないから必要ない存在」にかわりつつあるという危機感を感じ、そしてここにきて、自ら研究費を稼ぐという意識が芽生えてきたように思います。

 

たとえば、帝国データバンクの発表ですが、なんと大学発ベンチャーがなんと2018年で1000社を超えたそうです(倒産・解散は累計95件と頑張っています)。しかしこれは、医療サービスやAI関連がほとんどで、経営コンサルタントを除く人文社会系はあまり存在しません。ただ、自ら研究費を稼ぐという研究者像がだんだんと出てきたことだけは、事実のように思います。

 

もし文系が、この流れから置いていかれつつあるのであれば、それは悲しいことです。いや、「別にいいよ」という意見がほとんどかもしれません。しかし、人間や社会の研究をしているのに、この流れを無視するわけにはいかないように思います…よね?

 

注目されるDeep Tech 文系はどうする?

Sydney Harbor Bridge

さらにここ最近ですが、AIやITを超えてDeep Techという考え方も広まってきています。Deep Techとはつまり、分野に限らず、研究の成果を産業に応用した技術のことで、現在は農業やエネルギー産業、美容や健康などの領域で広がっています。研究者の出した成果を、積極的に売れる形で応用していこうということですね。

 

もしそれで研究者にもお金がいくのであれば、これほどよいことはないでしょう。もちろん、売れる研究だけに注目が集まることはよくないと思うのですが、ようは「活かし方」ということですよね。大学や国に金銭的な依存をするのではなく、自立してなおかつ余裕があるのだとすれば、研究者にとっても、これほど良いことはない気がします。

 

それで手前みそなのですが、人文社会系のわれわれも、もう大学に頼って研究するのをやめるような方向になっていかないといけないと思います。いや、そのような世の中になるように、私たちは努力すると声明を出したいくらいです。どうせ大学に残っても、雑務が多く、思ったように研究できないことが多いのは、みなさんの感じているところでしょう。

 

実際、日本の研究者出版は、そのために立ち上げました。まだ始まったばかりですが、「研究者を大学から救う」というのが、目標のひとつです。そして人文社会系がそうなるためには、研究者が持ち出す出版費用を限りなく少なくして、博士論文を売るしかないように思います。ではどうやって?と思うかもしれませんが、それは日本の研究者出版が他の出版社と戦うための武器なので、今のところは伏せておきましょう。まだもっと考えないといけない部分もありますしね!

 

ただここでは、同じ研究者だからわかる論文の魅力を、しっかり読者に伝えられるのは、日本の研究者出版の強みだ、とだけ言っておきましょう。

 

だってあえて極端なことを言うと、僕らが歴史や思想を研究しないと、そもそも人は技術をもったサルになってしまうかもしれないんですよ?

 

 

帝国データバンク「大学発ベンチャー企業の経営実態調査」(2018年)

 

――――――――――――

博士論文の出版について、とりあえず質問してみたい、あるいは論文を見てほしいという方は、こちらまでどうぞ!投稿論文も受け付けています。すでに他所で出した論文も、場合によっては出版することができます。

 

※この記事では、今後も人文科学、社会科学、自然科学といった分野に特定せず、アカデミック・ライティング(学術文章)の書き方や博士論文の出版について、有用な情報を発信していきます。

 

お問い合わせはホームから

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です