ご存知のように、博士論文や学術書を出版するには、お金がかかります。おそらく、だいたい100万円ほどです。つまり50万円の補助金をもらっても、50万円は自腹というわけです。また、前にも触れましたが、100万円の助成金をもらった場合でも、印税はもらえません。
で、アカポスが豊富にある時代ならよいのですが、そうでないとすると、世の(特に人文社会系の)研究者たちはかなり苦労を強いられることになります。そもそも書籍があるとないとでは就職に差が出るにもかかわらず、お金もないから書籍が出せないということになるわけです。なので、結構みなさん自腹を切っているようですね。そもそもそんなにお金をもらっていない人も。
ラノベ作家さんが思い付きをパパっと書いて何十万と稼ぐのに(いいすぎましたラノベ作家のみなさんごめんなさい)、他方で「人類のために」と思って(思ってない人ももちろんいるかと思います)何年も新しい知識を作り続ける博士たちが「これでいいのか」と思うわけですが、これが資本主義なわけです。
以前も似たようなことを書きましたが、学術的な書籍の出し方は、主に次の三つがあります。聞く限り、多いのは2と3のような気がします。
1.出版社が無料で出してくれる
2.一部あるいは全額助成金でまかなう
3.完全な自費出版
正直のところ、1は「売れる本・内容」だからという点が一番大きいと思います。ある程度の売り上げが見込める本だと、出版社も無料で出してあげることができるためです。しかし、この場合、売れる本=学術的に意義があるかというと、必ずしもそうではないことに注意です(もしそうだとしたら、ぜんぜん売れない学術書など存在しません)。
そこで、2.一部あるいは全額助成金でまかなう、3.完全な自費出版が多くなるわけですが(実際、世界的に投稿論文はこのどちらかです)、私の身の回りだと、だいたい半々くらいという感じでしょうか。
たとえ助成金をつかえても、一部であるために残りは持ち出し、あるいは著者買取りで、知り合いに配るという感じも多いです。
日本の研究者出版を立ち上げたのは、このような現実を変えたいためです。私が最初、この現実を知った時は、かなり衝撃的でした。そして思ったんです。もし本当に「意義」があるものが売れないのだとしたら、それは伝え方が間違っているのではないかと。
入門書や新書を書く若手の人もいますが、みなさんが感じている通り、売れてもこれらの作品は、自分の研究の二次創作です。そこでなんとか売れる学術書をつくりたいという思いから、日本の研究者出版は始まりました。
とはいえ、売れる学術書ほど難しい問題はない気がしますが…笑
でもこの苦労、実は私だけの苦労ではなく、博士のみなさんの苦労だったりするのですよね。
ああ、明日も頑張ります!
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